第3章 少子化・年金問題はこうやって解決する

3−6 鬼に金棒「子供限定ベーシックインカム」

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 今日における日本の停滞は、永田町の機能不全にもよるが、それ以上に致命的なのは、政治家に思想がなく、何をどうすれば良いか分かっていない事である。
政治家は時として「鬼のような」事を言わねばならない、しかしそれを言うためには、思想がなければならない。 思想がないから、目先の人気取りに終始し、失敗するわけである。

そもそも日本社会の停滞はなぜ起こるのか、それは思想を必要とする難しい問題である。 なぜならそれは、どこかに悪い独裁者がいるからではなく、我々個々の心の中にある「ガクレキ」の問題だからだ。
とはいえ思想というと、これもまた軍国主義や共産主義など、きな臭いものばかり出て来るが、国民は何もそんなものは求めていない。 少子化や年金問題を解決する、もっと生活に役立つ思想はないのか! (ちなみに衆愚政治とは、大衆が愚かなのではなく、選択に値する良い思想がない状態を指す、大衆はクルマを作れなくても、良いクルマを選ぶ能力はある、それは思想にも言えること、愚かなのは大衆ではなく、現実に即した良い思想を作れない哲人、良い思想を持っていない政治家である)
甘い事を言い、人気取りに終始する政治家は信用ならないが、かといって厳しい事を言っても、それが思想を伴わない、あるいは間違った思想であるならば、構造改革に正しくつながらず、国民をますます苦しめる(永遠に増税を繰り返す羽目になる)。
学歴税は、その様な税とは異なり、流れを変えるためのムチとしての税である。

前項で私は、奨学金や学割よりも、むしろ逆に「大学に行くと一生学歴税を取られる」社会にすれば「本当に必要な場合以外の」むやみな学歴取得を抑止できる。 そうやって「教育コスト」を削減する。
「鬼のような」事を言った。 続けて、教育コストをできる限り削減したうえで「次の段階として」国家がそれを肩代わり、国家が子供を養うようにすれば(子供限定ベーシックインカム)鬼に金棒、世界で最も効率の高い、最強の国家が誕生する、とも言った。
さらにこの政策は「教育の機会均等」という観点からも、全く問題ないどころか、むしろ望ましいものである事にも言及した。 これらは明確な思想に基づくものである。
 さらに、話には続きがある。 国家が子供を養う制度になれば、そこに資本が参入し、老人ホームならぬ子供ホームが増え充実する。 現行の児童相談所は、重度の肉体的虐待を救済するのが精一杯であるが、子供ホームが充実し一般化すれば、精神的虐待も含め、すべての虐待に対応可能となる。
「学歴税」および「国家が子供を養う制度」は、少子化・年金問題を解決するだけでなく、虐待問題をも解決するのである。 それだけではない、さらには大学のあり方、エリートの育成、社会のあり方にも革命を引き起こす。 これらについては以降に詳しく述べる。

大人のベーシックインカムは無理だが「子供限定ベーシックインカム」は、現在の日本の科学技術・生産力でも、充分実現可能である。
政治家の中には「大学の授業料無料」を主張する者もいるが、順番を間違えていると言わざるを得ない。 なぜなら生活費がなければ人は生きていけないからであり、本当の貧乏人や虐待され精神障害を負った子供は(経済的にも学力的にも精神的にも)「大学どころではない」親から逃げるのがやっとである。
まず子供の虐待防止、貧困対策が先「子供限定ベーシックインカム」こそ実現すべきである。 「子供の健やかな成長」こそが最優先「大学無償化」なんて超どーでも良い話である。
そもそも皆が大学に行けば格差は無くなるのか? むしろサムライ商法に搾取されるだけではないのか? (貧乏人が大学に行く頃には、金持ちは「もっと上」に行っている、貧乏人が無理して、いまごろ大学に行っても何の価値もない、いいカモである)
教育格差が問題なら「大学無償化」よりも「学歴税(マトリクス累進)」が先である。 まず「学歴税」を導入し「無用な学歴取得を抑制する」「盆暗大学は全部つぶす」それをやった上での再分配「その税収の範囲内で」「奨学金を充実させる」「後輩を育成する」というなら、マダ許されるだろう。
教育コスト増大が少子化の原因であるのは確かである。 しかしだからと言って大学の授業料を無料にしても少子化問題が解決するわけではない。 さらなる高学歴化を招き「ムダな学歴を増やすだけ」である。 教育格差がなくなるわけでもない。 金持ちはもっとカネをかけもっと上に行くからである。 弱い立場の貧乏人はますます厳しく搾取される。 大学無償化はどちらかというと「学者の失業対策」である。
「ムダな学歴」に関しては、これを「大学の質の問題」にすり替えられる事もある。 だがいくら質を高めても、それを活かす職業に就けなければ「ムダな学歴」に変わりはない。 「質の問題」に加え「それを活かす職業に就けているか」が重要な指標である。
なぜ今頃になって「大学無償化」の話が出て来るのだろう、少子化で学生が減少し(2018年問題)大学もいよいよ危なくなって来ているのだろうか「少子化、児童虐待問題を何ら解決することなく」ただ単に「大学を延命させる」「学者のクビをつなぐ」ための公金投入ならば、それこそ国を滅ぼす事になる。

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