第3章 少子化・年金問題はこうやって解決する

3−11 「週休3日制」を実現する方法

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 前項では虐待をいかに防ぐかというネガティブな話題だったが、ここからは話題を変え、優秀な人材をいかに育て活用するかというポジティブな話をしよう。 優秀な人材をいかに育ていかに活用するか、実はそこにも本書の主張する「学歴税」が深く関わって来る。 それはどういう事か詳しく説明しよう。
 学歴税を導入すれば、多くの若者は「本当に大学に行く必要があるのか」再考するようになる。
そうなることで「単なる横並び意識」から来る「親のすねをかじり親に負担をかける形での」「むやみな学歴取得」が抑止される。 学歴税を導入すれば、親のすねをかじって安易に大学に行く者は激減し「大学に行くよりも就職が先」という社会になる。 つまり「大学選び」よりも「会社選び」が先になる。
さて将来の大学進学を考えている「向上心あふれる優秀な人材」が企業を選ぶ基準はというと、当然の事ながら「生涯学習が続けられるかどうか」という点に集中する。 そのため(優秀な人材を得ようとする)企業は競って週休3日制を導入するだろう。 企業が「一流」であるか、その基準は「平均学歴」でも「平均賃金」でも「年功序列」でも「安定」でも「終身雇用」でもなく「週休3日制」となるだろう。

これまでも「夜間大学」はあったが、残業や移動時間の関係で、社会人にとって利用しやすいものではなく普及には至らなかった。 週休3日制になり金曜大学・土曜大学講座が開設されれば、社会人学生は飛躍的に増え、利便性が高まり、好循環が生まれる。
これまで週休3日制が普及しなかった原因は「労使双方にインセンティブがないから」息子を大学に行かせなければならないオヤジにとって、収入が減るのはむしろ困る(ダラダラと残業するしかない)。 だが生涯学習社会に移行すればオヤジは無理して働く必要が無くなる、一方で将来の大学進学を考える優秀な人材は週休3日制の企業を選択し、それが優秀な人材を得ようとする企業のインセンティブとなる。

これまでは一流大学に入り「寄らば大樹の陰」とばかり大企業に入社する事が、お決まりのエリートコースであったが、優秀な人材が「寄らば大樹」を選択するのは良くない傾向である。
「学歴税」を導入すれば、そのような体制に風穴を開ける事が出来る。
今後は中小企業でも、生涯教育に理解を示す企業が、一流企業として伸びて行くだろう。

誰もが大企業を目指しやりたくもない受験勉強を続ける「低生産性」がこれまでのスタイルであった。

 さらに嬉しい事に生涯学習社会に移行すれば、ポスドク問題も解決する(ポスドクとは博士号を取ったものの企業に敬遠されてしまい就職先がない人たちである)。 もちろん研究が成功すれば良いがうまく行くとは限らない、それで自殺されたのでは大学院まで行かせた親にとってはたまらない。
生涯学習社会に移行し仕事と研究が両立できる社会になれば、そのような悲劇は防げる。

研究の種類にもよるだろうが、すべての研究がたちどころに企業の利益を生むものでない以上、何らかの仕事を持った上で、仕事と研究を両立しやすい社会というのは理想である。

一方で、生涯教育を実際に必要としている業界もある。 私はIT業界に勤めているが、そもそもシステム開発のトラブルが多いのはなぜなのかを考えたとき、思い当たるふしがある。
日本のIT大企業には未だに年功序列の年寄りがのさばっていて、その一方で、システムを実際に作るプログラマは、下請けや外国人を長時間労働させている。

とはいえここで私は「年功序列の年寄り」を槍玉に挙げるつもりはない。 彼らだってムスコを大学に行かせるため大変なのだ。

目には見えないので、一般の人や政治家には分かりづらいだろうが、鉄道に例えるならば未だにSL(蒸気機関車)が走っているのが、我が国のIT業界である(知的労働ではなく肉体労働と化している)。
決定的に教育が不足し、これでは良いシステムは作れない。
そもそもIT業界で務まるのは頭が良いという証なのだから、日進月歩のIT業界こそ真っ先に週休3日制にして大学に行かせる事を事業者に義務づけるべきである。

技術は進歩している。 一口にコンピュータプログラムといっても、昔に比べれば生産性は百倍以上向上している。 それらを無視し「プログラマなんて価値の低い下流・下請け・外国人の仕事」「管理している俺たちの方が偉いんだゾー」と、よりにもよって年功序列の年寄りがのさばっている。
技術が未発達で単純作業が多かった頃は、人件費の安い中国という手もあったが(オフショア開発)今や翻訳のコストやセキュリティリスクの方が大きくなっている。

IT業界だけではない。 生涯学習社会に移行すればさらに医者も世襲でなくなり良い事ずくめである。

私が高校生の時、クラスメートに医者の息子がいたが雰囲気は暗かった。 世襲の重みは本人をも苦しめる。

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